【2026年予測】「暗号資産トレジャリー企業」に迫る存亡の危機|ただ保有するだけのモデルはなぜ限界なのか?

仮想通貨

2025年、米国市場を中心に「デジタル資産トレジャリー(DAT)」と呼ばれる企業群が急増しました。これは、事業資金や調達資金でビットコインなどの仮想通貨を大量に保有し、自社の株価上昇を狙うビジネスモデルです。

しかし今、業界のトップたちは「2026年には、こうした企業の多くが姿を消すだろう」という厳しい予測を立てています。Cointelegraphの取材に対し、業界幹部たちが語った「淘汰の理由」と「生存条件」について詳しく解説します。

要点(What to know)
  • 大量淘汰の予測: 2025年に急増した暗号資産トレジャリー企業の多くが、株価低迷と競争激化により2026年に「消滅」すると予測されている。
  • アルトコイン保有企業の危機: 特にアルトコインに特化した企業は、保有資産価値(mNAV)を維持できず、真っ先に市場から退場する可能性が高い。
  • 「ガチホ」戦略の終焉: ただ保有する(HODL)だけのモデルは通用しなくなっており、利回り(イールド)運用やTradFi(伝統的金融)水準の透明性が生存の条件となる。


2025年のブームから一転、2026年は「冬の時代」へ

「来年に向けて、DAT(デジタル資産トレジャリー)企業の展望は少し暗いものになっています」

こう語るのは、仮想通貨の利回り(イールド)を提供するプラットフォーム「MoreMarkets」の共同創設者、アルタン・トゥタール(Altan Tutar)氏です。

2025年には、ウォール街の投資家たちが仮想通貨市場に参入するための新たな手段として、多くの企業がビットコイン保有を開始しました。10月にビットコイン価格がピークに達した際、大口投資家からの資金流入により、これらの企業の株価は一時的に急騰しました。

しかし、その後の市場全体の冷え込みに伴い、企業の評価額も大きく毀損しています。市場が過密状態(似たような企業が増えすぎた状態)にある中で、トゥタール氏は次のように予測します。

「ビットコイン・トレジャリー企業のほとんどは、その他のDAT企業とともに消滅するでしょう」

なぜ「アルトコイン保有企業」が真っ先に危ないのか

トゥタール氏は、特にリスクが高いのはビットコイン以外の「アルトコイン」に特化した企業だと指摘します。その理由は「mNAV(純資産価値倍率)」という指標の維持が難しくなるからです。

  • mNAVとは?
    • 企業の「時価総額」が、保有している「暗号資産の価値」に対してどれくらいの倍率かを示す指標です。
    • 通常、投資家は「資産価値以上のプレミアム」を期待して株を買います。

アルトコインは価格変動が激しいため、市場が下落すると、企業の時価総額が保有資産の価値を下回ってしまうリスクが高まります。そうなれば投資家の信頼を失い、資金調達も困難になります。

トゥタール氏は、「イーサリアム(ETH)、ソラナ(SOL)、XRPといった主要資産を扱う大手DAT企業であっても、アルトコイン特化型であれば、すぐに同じ道をたどる可能性がある」と警鐘を鳴らしています。

「ガチホ(HODL)」だけでは生き残れない時代

「ビットコイン・トレジャリーは、無限にドルが増え続ける魔法の杖ではありません」

こう語るのは、ビットコイン活用プラットフォーム「Solv Protocol」の共同創設者、ライアン・チョウ(Ryan Chow)氏です。 彼によると、ビットコインを購入・保有する企業数は2025年の年初には70社でしたが、年半ばには130社以上に急増しました。しかし、その多くが次の市場の低迷期を生き延びることは難しいと見ています。

生き残るための「条件」とは?

チョウ氏は、勝者と敗者を分けるポイントは「利回り(イールド)」にあると述べます。

  • 敗者となる企業:
    • 明確な財務枠組みを持たず、単なる「マーケティングの話題作り」としてビットコインを買い集めた企業。
    • これらはビジネスのコストを支払うために、結局ビットコインを売却せざるを得なくなっています。
  • 勝者となる企業:
    • ビットコインをただ保管するだけでなく、「オンチェーン金融商品」を活用して持続的な利息収入を得ている企業。
    • または、保有資産を担保にして現金を借り入れ、下落局面でも売らずに凌ぐ仕組みを持っている企業。

「ビジネスモデルを『投機』から『構造化された財務管理』へと進化させる必要があります。ただビットコインを持つだけでなく、透明性のあるシステムの中で、デジタル資本として能動的に運用しなければなりません」(チョウ氏)

強力なライバル「ETF」の出現と、求められる「伝統的金融の水準」

さらに、ステーブルコイン発行企業「First Digital」のCEO、ヴィンセント・チョク(Vincent Chok)氏は、外部環境の変化について言及します。

投資家にとって、今や最も手軽で安全な選択肢は「ETF(上場投資信託)」です。 米国の規制当局がETFにおける利回り提供のルールを緩和したことで、資産運用会社は「ステーキング報酬」などを含んだ魅力的な商品を次々と投入しています。これが、トレジャリー企業にとって強力な競合相手となっています。

トレジャリー企業が目指すべき姿

チョク氏は、トレジャリー企業が生き残るためには、ETFと同様に「伝統的金融(TradFi)の期待に応えること」が不可欠だと主張します。

  • 透明性: 資産がどこにどう保管されているか明確にする。
  • 監査能力: 第三者による監査をクリアする。
  • コンプライアンス: 機関投資家の基準に沿ったトークン審査や資産管理を行う。

「単に仮想通貨を持っているだけの企業」から、「プロフェッショナルな金融インフラと統合し、厳格な基準で運用される企業」へと脱皮できるかどうかが、2026年を生き抜くカギとなりそうです。


参考文献:

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