2025年の金融市場では、奇妙な現象が起きています。 「究極の安全資産」である金(ゴールド)と、「経済成長の象徴」である銅(カッパー)が同時に高騰する一方で、かつて「デジタルゴールド」ともてはやされたビットコイン(BTC)だけが低迷しています。
この記事では、金・銅・BTCのパフォーマンス格差(ダイバージェンス)を分析し、今市場で起きている「実物資産(Tangible Assets)への回帰」という巨大なトレンドを解説します。
- 金と銅の圧勝: 今年、金と銅は他の主要資産を大きく上回るパフォーマンスを見せており、特に金の上昇率が際立っている。
- ビットコインの苦戦: BTCは「恐怖(リスク回避)」の受け皿にも、「AI主導の成長」の受け皿にもなれず、投資家の関心は実物資産へとシフトしている。
- 市場の矛盾と本音: 金と銅が同時に買われる現象は、市場が「AIによる成長」と「金融システムの崩壊リスク」の両方にベットしていることを示唆している。
データで見る「2025年の勝者と敗者」
まずは、市場の歪みを数字で確認してみましょう。以下の表は、今年のリターンを比較したものです
▼ 【2025年】主要資産のパフォーマンス比較
| 資産クラス | 2025年 年初来騰落率 | 投資家の動機 |
| 金 (Gold) | +70% | 恐怖、インフレヘッジ、中央銀行買い |
| 銅 (Copper) | +35% | AI需要、インフラ、電化 |
| Nasdaq | +21% | ハイテク株選好 |
| S&P 500 | +17% | 米国株への資金流入 |
| ビットコイン (BTC) | -6% | どっちつかず、ソブリン買いの欠如 |
| 米ドル指数 (DXY) | -10% | ドル安、法定通貨への不信 |
通常、金(守り)と銅(攻め)は逆の動きをしやすいですが、今年は「実物(手に触れられるもの)」という共通点だけで両方が買われています。
なぜビットコインは「2つのブーム」に乗り遅れたのか?
ビットコインは本来、以下の2つのシナリオで上がるはずでした。
- 「デジタルゴールド」として: 社会不安が高まれば、金のように買われるはずだった。
- 「ハイテク資産」として: AIブームでナスダックが上がれば、連れ高するはずだった。
しかし2025年、BTCはそのどちらの資金も取り込めませんでした。
- 恐怖トレードの失敗: 戦争や財政懸念が高まる中、投資家は「パスワードを忘れたら消える資産」ではなく、「数千年の歴史がある物理的な金」を選びました。
- AIトレードの失敗: AIブームの本質は「電力とチップ」です。AIに不可欠な導電体である「銅」には実需がありますが、BTCにはAI開発における直接的な役割がありません。
「実物資産」への巨大なシフト
このパフォーマンスの乖離は、投資家の心理が「無形資産(Intangible)」から「有形資産(Tangible)」へシフトしていることを示しています。
「国の借金(法定通貨)も信用できない、実体のないデジタルコード(仮想通貨)も不安だ。だから、目に見えて、触れられて、産業や宝飾として使えるモノを持っておこう」
これが、今の機関投資家の本音であり、ビットコインが直面している最大の逆風です。
まとめ:BTCが復活するための条件
金と銅の同時高騰は、世界経済が「AIによる成長期待」と「システム崩壊の恐怖」の間で引き裂かれていることを表しています。
ビットコインがこの状況を打破し、再び資金を呼び込むためには、「単なる投機対象」ではなく、この不安定な世界における確固たる「実物資産に匹敵する価値」を再証明する必要があります。


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